図書館総合展フォーラム2014 in 岡山参加レポート

2014年5月18日(日)に開催されました図書館総合展2014 in岡山では、約300名の方にご来場いただきまして、盛会のうちに幕を閉じました。今回、残念ながらご参加いただけなかった皆さまにも会場の様子や雰囲気を感じていただけるよう、参加者である佐藤賢二さん(岡山県立図書館)より参加レポートをお寄せいただきました。

ご執筆いただいた佐藤さんに心より御礼申し上げます。

図書館総合展フォーラム2014 in 岡山参加レポート

執筆:佐藤賢二(岡山県立図書館)

岡山で開催された図書館総合展フォーラムでは、「図書館の連携」と「場としての図書館」、2つのテーマが設定された。

会場に選ばれた岡山大学鹿田キャンパス Junko Fukutake Hall は、

“合理的で寛容でボーダレスな出会いの場”
“自由で愉快なコミュニケーションを誘発する場”
“セレンディピティを生み出す場”

をコンセプトに、大学と地域の人々が集い、交流するために建てられた施設である。今回の図書館総合展では、輪を描くように連なった企業ブースにも自然と多くの参加者の人だかりができ、談笑の声が聞こえるなど、終始和やかな雰囲気の中、ブース見学することができた。

両テーマを議論するにふさわしい場が提供されたことに、参加者として大いに期待が膨んだ。当日のプログラムに沿って当日の様子の一部をレポートしていきたい。

基調講演:岡山の図書館とその連携、そして課題-大阪、滋賀、岡山での経験を踏まえて 講師:嶋田学氏(瀬戸内市 教育委員会 新図書館開設準備室 室長)

「図書館の連携」といえば、館種を超えた図書館間での資料の相互貸借ネットワークや協力レファレンスがまず思い浮かぶ。しかし、これらの機能はすでに図書館において自明のサービスであり、多くの図書館はその次のステップ、既存の枠組みに縛られない、さらに踏み込んだ形での「連携」のあり方を模索しているのが現状ではないだろうか。

では、図書館は何のために、誰と、どのような「連携」をこれから志向していくべきなのか。複数自治体の図書館勤務経験があり、現在は瀬戸内市で新設予定の図書館計画・準備にあたられている嶋田氏による理論と実践に基づくお話から、その現状と課題について論点整理を行い、今後の図書館振興に資するために本フォーラムを聴講した。

嶋田氏は、「図書館の連携」の目的が「国民の教育と文化の発展に寄与」することをはじめに再確認し、「教育」とは異なる価値の多様性を許容する「自由の相互承認」( 苫野一徳『教育の力』 より)の感度を育むことであり、「文化」とは「人間がよりよく生きるために、考えを形にする営み」という伊予市双海町の元教育長・ 若松進一氏 の言葉を紹介し、図書館の役割と機能を踏まえた連携構築の必要性を説いた。

図書館間の連携面では、図書館計画やサービス企画の情報交換等の政策的連携が十分ではなく、都道府県立図書館による、政策企画の動機づけや政策に関する情報交換の働きかけを希望する声も聞かれた。

また、来館者へのサービスのみに充足し、既存のサービスを相対化する余裕のない図書館は外部と連携する発想が生まれにくいとの指摘の下、図書館外部との連携の役割と機能について次の4つのあり方が提示された。

1.図書館サービスの認知不足解消に向けた広報
2.図書館サービスのニーズ把握に向けた調査・マーケティング
3.図書館サービスの効果的展開に向けた、地域課題や関心を共有する市民に向けたコーディネーション
4.地域が求める情報サービスの掘り起こし手を育成する人的ネットワークづくり、ファシリテーション

これに対し、聞き手の岡本真氏(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)からはこのような「連携」を現実のものとするために、どのようなことが必要か、という投げかけがあった。嶋田氏は、図書館を含む町内他部局が地域のために連携する文化が根づいている東近江市を例に挙げ、政策の中に連携を位置づけ、図書館単独では生めない価値を常に意識し、市民あるいは地域社会に「気付き」をもたらすため、お節介しあう関係性を築くことが肝要ではないかとまとめられた。

パネル討論1:公共・学校・大学図書館の連携 地域をつなぐ図書館の役割

岡山県内の久戸瀬瑞季氏(岡山県立図書館)より公共、永井淳子氏(前岡山県立津山工業高等学校 学校司書)より学校、大園隼彦氏(岡山大学附属図書館)より大学、各図書館のそれぞれの立場から図書館連携にまつわる話題提供が寄せられた。
久戸瀬氏(公共)は、県域における様々な連携の要となることを目指す、岡山県立図書館の取り組みの一端を紹介するとともに、組織レベルの連携を前に、組織の枠を超えてお互いの顔が見える個人レベルでの連携の意義を訴え、本と図書館に関心のある人が集まる トショカン・ヨコの会 の活動を紹介された。

永井氏(学校)は、津山市地域の市立図書館、大学図書館、高校図書館が三位一体となり、地域の学習資源の共有化が段階的に進んでいった経緯を説明された。学校と地域を結ぶ架け橋として、住民が学校教育に対する関心を持ち、理解を深めるきっかけとなる学校図書館の一般開放に関する提案があったと紹介された。

大園氏(大学)は、岡山大学が保有する学習リソースを地域に還元する池田家文庫ワークショップ等の取組みを紹介された。地域全体の図書館が市民の生涯学習や地域活動を支援するという方向性は同一であり、組織を単位にするのではなく、個々のユーザーの目的や対象レベルに寄り添った情報リテラシー教育等の共同実施の可能性について言及した。知識を必要とする利用者は、図書館の外側に存在することから図書館利用者の活動を支援する「サポーター」、利用者の活動を広げ利用者同士の活動が繋がる「ファシリテーター」、さらには図書館員自らが活動に携わる「プレイヤー」へと展開する、これからの図書館員像も示された。

以上の話題をふまえながら、コーディネーター役を務められた石原達也氏(特定非営利活動法人岡山NPOセンター)は、連携の価値は他とは違う個性をそれぞれが持っていること。協働によってお互いの活動コストが下がり、単独では見込めない相乗効果を生むことができると前置きした上で、図書館が持つべき個性とは何か。図書館運営に参画する市民の役割とは何か、とフリップトークが交わされた。

パネル討論2:場としての図書館-「知の広場」としての可能性

「場としての図書館」をめぐっては近年活発な議論が交わされ続けている。多くの大学に設置が進んだラーニングコモンズや石原氏が代表を務める「 遠足文庫 」のような、本がコミュニティをデザインするアイテムとして活用される事例が全国的に増えている。

生活インフラ化したインターネットの存在やデジタル技術の進展にともない、資料提供という図書館の本質的機能も、利用する側の情報要求認識が変わることで、「知」のマッチングプレイスとして機能するための、新たな方法論の確立が図書館に求められているといえるのかもしれない。

石原氏は、これからの暮らしの持続可能性の視点から地域課題を数値でとらえ、豊かな社会の実現のために、図書館がまちの「公共空間」の使命として、課題の把握と解決の糸口を見つける役割だけでなく、市民の社会参加を促し、つながりを生む場としての役割に期待を寄せた。

嶋田氏もまた「持ち寄り・見つけ・分け合う広場」をコンセプトとする新しい図書館づくりを通じて、「知の広場」は潜在的な問題意識を発見できる場所と位置づけ、地域の課題に対して消費者目線ではない、市民が当事者性をもって参画することでより良く生きるための場として、人や組織のつながりをつくる、コーディネート機能やファシリテーション機能を高めた図書館を計画する様子が伝えられた。

高橋真太郎氏(鳥取県立図書館)は、 鳥取県立図書館 のお話では、スタッフ全員がチーム一丸となり、図書館外部に向けて本の活用を提案する「仕掛け」を次々に持ち込み、営業活動を続けている様子がうかがえた。それらが特別な仕事ではなく日常的な「仕組み」となっている点にまず驚かされた。

谷一文子氏(株式会社図書館流通センター/海老名市立図書館)は、これまでの図書館には顧客志向に基づいたサービス視点が不足してきたと指摘された。図書館を使わなければならない人たちが何を求めているのか。そこにわざわざ来てもらう目的をつくるにはどうすればよいのか。図書館経営におけるマーケティング実施の必然性について語られた。

途中、岡本氏からは単に集客のみが図書館の目的となるならば、人が集まる機能にそのリソースを集中的に割り当てれば良く、資料活用という図書館の本来の強みが生かせないといった懸念も示され、図書館におけるオーナーシップ育成の課題をどのようにとらえるのかに論点が集まった。

全体のフォーラムを通じて異なる2つのテーマが、地域を豊かにする図書館というビジョンの下、実は共通項の多い課題を含んでいる点に気づかされた。図書館という「場」において、市民(利用者)にどうなってほしいのか、どうなりたいのか。そこには情報を潜在的に求める人もいれば、自ら情報発信できる人が多く存在もする。あるいは地域の中で読書体験の共有など、対話と交流が思いがけない課題の発見と社会参加を促す可能性も秘めている。市民の「知」を生かし、多様な資料との出会いを演出し、市民が相互に連携しあう関係をとりなすための「仕掛け」づくりが、今後の図書館に求められている印象を強く抱いた。

次回開催

2014年7月11日(金)、図書館総合展フォーラム2014 in 新潟開催
http://2014.libraryfair.jp/node/1985



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